肩のインナーマッスル:前後運動2

注)このページの筋肉についての解説は「肩のインナーマッスル:肩の前後運動」と同じです。

肩甲骨の裏側から始まって、肋骨(ろっこつ)の前の方につながっているのが前鋸筋(ぜんきょきん)という名前のインナーマッスルです。

今回ご紹介するトレーニング法「ライイング・セレタス・アンテリオ」では、この前鋸筋を鍛えることになります。

前鋸筋の構造と働き

まずは左の図を見てください。

前鋸筋は肩甲骨の裏側から、肋骨の脇腹あたりのところに広がっています。
肩甲骨に隠れているのでちょっと分かりにくいですが、「肩甲骨と肋骨をつないでいる筋肉」という感じです。

前鋸筋の構造と働き※機能解剖学ソフトウェア「解体演書」の画像を加工して使用しています。

次に右の図です。オレンジの矢印が筋肉の収縮する方向です。
(肩甲骨がジャマなので、半透明にして表示しています。)
前鋸筋が収縮すると、肩甲骨が肋骨に引っ張られて前の方にスライドして行く力が生まれることが分かるでしょう。

ライイング・セレタス・アンテリオ

それではトレーニングの方法を説明しましょう。

「ライイング・セレタス・アンテリオ」というのは、ライイング、つまり寝転がった状態で前鋸筋「serratus anterior」を動かすインナーマッスルの筋トレ種目です。

鍛えられる筋肉は「セレタス・アンテリオ」と同じですが、トレーニングチューブは不要です。
また、腕の重さが垂直に前鋸筋にかかるため三角筋(肩のアウターマッスル)の前部が働きにくく、インナーマッスルを意識しやすいという長所があります。

STEP1

まずはベンチや床など、安定した場所に仰向けに寝転がります。
両腕にウェイトを握り、腕をまっすぐ天井方向に伸ばしましょう。

ライイング・セレタス・アンテリオ ステップ1

この段階では体の力を抜き、両肩は床に付いた状態にしておきます。

STEP2

準備ができたら、腕をまっすぐ伸ばしたまま両腕をスライドさせるようにして、肩を床から離します。

ライイング・セレタス・アンテリオ ステップ2

背骨のあたりの筋肉をストレッチするようなつもりで、肩をググっと上げていきましょう。

その状態で4~5秒ほど姿勢をキープしてから、ややゆっくりとSTEP1の姿勢に戻ります。

STEP1の姿勢に戻ったら、2~3秒ほど休んでから、また肩を前に出すという風にして動作を繰り返して下さい。

この種目を行う上での注意点

ライイング・セレタス・アンテリオを行うに当っての注意点は以下の通りです。

なお、初めてインナーマッスルのトレーニングを行う方は、「インナーマッスル基礎知識」「トレーニングの前に」のコンテンツを必ずご覧下さい。

動作の速度について

特に前鋸筋に負荷がかかっているのは肩を前に出し切った状態、つまり4~5秒姿勢をキープしている時です。

前鋸筋の動きを意識するには、肩を前にスライドさせる動作に1秒くらい、後ろに戻す動作に1.5秒くらいかけると良いと思います。

ヒジや手首の角度について

ベンチプレスなどアウターマッスルを鍛えるための筋力トレーニングでは、ヒジを完全に伸ばさないのが常識です。

ヒジは伸ばしきったまま、肩だけを上下に動かす

しかしライイング・セレタス・アンテリオの場合、ヒジを完全に伸ばし切った状態(ロックした状態)にしておかないと、負荷が上腕三頭筋にも分散されてしまうので注意しましょう。

セットの途中で力を抜くこと

普通の筋力トレーニングでは「セットの途中で筋肉を休ませてはいけない」というのが基本です。

しかし、ライイング・セレタス・アンテリオを行う場合は一回ごとに筋肉を休ませた方が、アウターマッスルが運動に参加しにくくなり、より前鋸筋を効率よく鍛えることができます。

床に肩を下ろせば自然と力が抜けるとは思いますが、力を入れる動作と抜く動作、いわゆる「静」と「動」を繰り返すトレーニングであることを意識しておいて下さい。

負荷の強さとセット数

20~30回でほどよい疲労を感じるようにウェイトの重さを調節して下さい。
(トレーニングに慣れていない場合は、自分の腕の重さだけで行っても良いと思います。)

標準的なセット数は2~3セットです。

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